牛乳に乳酸菌は含まれている?

ヨーグルトやチーズには、健康と美容に良い乳酸菌が豊富に含まれています。「乳」という言葉が入ることもあって、「牛乳=乳酸菌」というイメージを持つ人が多いのですが、牛乳にも乳酸菌が含まれているのでしょうか?

牛乳と乳酸菌の関係について解説しながら、牛乳とヨーグルトとの違いについてご紹介していきます。

牛乳に含まれる乳酸菌の量

腸内の善玉菌を増やし、お腹の調子を整えてくれる乳酸菌の発酵食品の代表は、ヨーグルトやチーズなどの乳製品です。となると、「牛乳には乳酸菌が含まれている」と漠然と考えてしまっても仕方がないのですが、牛乳からは生きた乳酸菌は摂れません。

ヨーグルトやチーズなどは、乳酸菌が牛乳に含まれる糖分、乳糖を分解することで作りだした食品です。牛乳はあくまでも乳酸菌食品をつくる原料であって、乳酸菌が摂れる食べ物ではないのです。

殺菌で牛乳の乳酸菌は死滅しているってホント?

乳酸菌のような微生物が繁殖するためには養分が必要ですが、牛乳は乳酸菌の餌となる乳糖が豊富で、乳酸菌が好んで繁殖する食べ物です。乳酸菌は自然界のあらゆる場所に存在しているため、牛の乳房から生乳が絞られるそばから、私たちの皮膚についていたものや空気中に浮遊する乳酸菌が生乳に混入し、繁殖しようとします。

ですが生乳は搾乳後すぐに殺菌処理を受けるので、生乳に混入した乳酸菌は活動ができず、繁殖して数を増やす前に死滅してしまうのです。

牛乳を殺菌するのはなぜ?

牛乳は乳酸菌だけでなく、多くの微生物や細菌が好む、栄養豊富な食べ物です。なかには私たちの体に害をなす病原性の細菌が繁殖してしまうこともありますし、腐敗菌の繁殖を抑えて品質を守る必要があることから、食品衛生法の乳等省令では、牛乳の殺菌処理を義務づけています。

牛乳の殺菌方法にはいくつかの種類がありますが、一般的には、120~150℃の高温を数秒間維持して殺菌する、超高温瞬間殺菌法が使われます。乳酸菌は100℃以上の高温が数秒続くだけで死滅してしまうので、市販されている牛乳からは生きた乳酸菌を摂ることができないのです。

低温殺菌牛乳でも乳酸菌は死滅する?

牛乳は熱を加えるほど味が落ちてしまうため、生乳を63~65℃程度の低温の状態を30分間維持し続けて低温殺菌した牛乳も市販されています。こういった低温殺菌牛乳でも、生きた乳酸菌を摂ることはほとんどできません。

乳糖を養分とする乳酸菌は熱に弱く、40℃を超えれば活動は停止してしまいますし、50℃以上の温度が長く続けば殺菌されてしまいます。低温殺菌法でも牛乳に含まれる乳酸菌は死滅していますし、万が一生き延びても数はごく少量なので、乳酸菌が摂れるというほどの効果を得ることはできないでしょう。

牛乳とヨーグルトの違いとは?

牛乳はチーズやバターなどの原料にもなりますが、乳酸菌が豊富な乳製品の中でも、「お腹の健康に良い」と人気が高いのが、ヨーグルトです。ヨーグルトは乳等省令で「はっ酵乳」に分類されますが、原料である牛乳と乳酸発酵によって作られたヨーグルトには、一体どんな違いがあるのでしょうか。

ヨーグルトは味に差が出やすい

自然界に存在する乳酸菌の数は多く、大きく分けると、野菜に含まれる糖分を餌として漬物などの発酵食品を作る植物性乳酸菌と、牛乳などの動物由来の食べ物に含まれる糖分を餌に繁殖する動物性乳酸菌に分けることができます。牛乳からヨーグルトを作るのは動物性乳酸菌ですが、動物性乳酸菌にもさまざまな種類があり、使われる乳酸菌によって色や固さ、風味などが違います。

牛乳の味は商品によってそれほど大きな違いはありませんが、ヨーグルトの味や酸味は商品によって差が大きく、好みがわかれるのは、乳酸菌の効果だといえます。最近は抗アレルギーなどの特殊な健康効果を持つ乳酸菌のヨーグルトが市販されていますが、ヨーグルトは習慣的に食べることで健康効果を発揮しますので、自分が無理なく続けられる乳酸菌を選ぶことをおすすめします。

ヨーグルトは固まっている

牛乳はサラサラとしていますが、ヨーグルトは商品によって差は大きいものの、凝固しています。これも乳酸菌の影響によるものです。牛乳はレモン汁やお酢を入れるとホロホロと固まりますが、これは牛乳に含まれているカゼインと呼ばれるたんぱく質が、酸によって凝固するからです。

乳酸菌は乳糖を分解して繁殖しますが、このとき乳酸という酸性の物質を作り出します。乳酸はヨーグルトに酸味を与えるとともにカゼインと反応して牛乳を凝固させ、ヨーグルト独特のとろみを作り出すのです。

ヨーグルトは消費期限が長い

牛乳とヨーグルトの違いの一つには、保存性の違いがあげられます。それぞれのパッケージを比べてみるとわかるとおり、ヨーグルトの方が牛乳よりも消費期限は長いのですが、これも乳酸菌によって得られる効果です。

乳酸菌が繁殖すると多くの乳酸が作られ、ヨーグルトは酸性に傾きます。腐敗菌や雑菌は酸性の環境では繁殖が難しいので、そのぶんヨーグルトのほうが牛乳よりも長持ちするのです。

ヨーグルトは圧倒的に乳酸菌の数が多い

ヨーグルトはお腹に良い乳酸菌を豊富に摂れる、健康的な食品だといわれていますが、ヨーグルトに含まれる乳酸菌の大部分は胃酸によって死滅してしまい、生きて腸に届くことはありません。牛乳の場合は殺菌により乳酸菌が死滅しているのですが、ヨーグルトの乳酸菌だって死滅してしまうのに、なぜヨーグルトだけが、「お腹に良い」といわれるでしょうか?

それは、ヨーグルトに含まれる乳酸菌の数が、牛乳に比べて圧倒的に多いからです。食品に含まれる乳酸菌は生きた菌であっても、殺菌や胃酸によって死滅した菌であっても腸内環境を整える効果に変わりはないのですが、牛乳はもともと乳酸発酵が進まないうちに殺菌をしているので、牛乳に含まれる乳酸菌の死菌はごくわずかです。

それに比べてヨーグルトには規定上1mlあたりに1000万以上の乳酸菌が含まれていますので、たとえ胃酸によって乳酸菌が死滅してしまっても、ヨーグルトの方がはるかに腸内環境を整える効果が高いといえるのです。

牛乳で下痢になる人でもヨーグルトなら大丈夫?

市販されている牛乳とヨーグルトの違いは、乳酸発酵が行われているか、いないかの違いで、カルシウムやタンパク質、脂質などの栄養に大きな差はありません。ですが、ヨーグルトの方が、乳酸菌が牛乳の成分を分解しているぶん栄養を吸収しやすく、消化がしやすいので、お腹に負担がかからないというメリットがあります。

牛乳の中に含まれる糖質のほとんどは乳糖で、小腸でラクターゼと呼ばれる酵素で分解されて吸収されるのですが、私たち日本人の腸は乳糖を分解する能力が低く、乳糖を処理しきれずに下痢をおこしやすい傾向があります。なかにはラクターゼを全く生産できない、乳糖不耐症の人もいるのですが、ヨーグルトは乳酸菌が乳糖を分解してくれるため下痢を起こすリスクが少なく、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人でもヨーグルトなら食べることができるといったケースも多いのです。

牛乳もヨーグルトもあわせて摂ることが大事!

ヨーグルトからはお腹に良い乳酸菌が摂れ、牛乳からは摂れないと聞くと、「じゃあ、健康のためには、牛乳よりもヨーグルトを食べなくちゃ!」と考えてしまいがちですが、牛乳とヨーグルト、どちらがより優れているという評価はできません。

牛乳からは乳酸菌による腸内環境改善効果は期待できませんが、牛乳も腸内の善玉菌を増やす成分がたくさん含まれている、栄養価の高い食品です。牛乳に含まれる乳糖は腸内の善玉菌であるビフィズス菌の好物で、ビフィズス菌の繁殖を助けて悪玉菌の繁殖を抑制し、牛乳も腸内バランスを整える効果があるのです。

牛乳からは乳酸菌は摂れませんが、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌の働きをサポートしてくれる食べ物です。ヨーグルトの乳酸菌効果だけを重視するのではなく、牛乳もヨーグルトもバランスよく食卓に摂り入れていきましょう。